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シングル・モルトの聖地、スコットランドのアイラ島。そしてアイリッシュ・ウィスキーを楽しむべく、あちこちを巡ったアイルランド旅行。
村上春樹によるウィスキーをテーマにした2編のエッセイを収録。
出版社:新潮社(新潮文庫)
スコットランドのアイラ島やアイルランドでのウィスキーに関する旅行記である。
文章はいつもの春樹節が冴えていて読みやすくなじむものがある。村上春樹のファンだったらこれだけでも十分だろう。
中身の方は旅行に際して触れたウィスキーに関する風景を切り取った感じだ。
そこで描かれる人間たちの描き方はうまいし、読んでいると実際、ウィスキーを飲みたくなってくる。コクや味わい、香りなどのイマジネーションがかきたてられ、そこでつくられる酒の風景を思い浮かべることができ、焼酎派の僕でもウィスキーに対して親近感が湧いてくる。
これはやはり春樹の文章のうまさゆえだろう。そう人に思わせる文章を書くだけでもやはりこの作家はすごいと思う。
それに奥さんの撮った写真もきれいで異国情緒をかきたてられるものがある。
だが基本的にウィスキー好きか、春樹のファンでないなら、読む必要はないだろうな、とも感じた。もっともこの作品を手に取るの自体、春樹ファンくらいしかいないかもしれないけれど。
僕はこの本を読んでウィスキーを買いに行く気になったが、たとえそう行動させた作品とはいえ、ファンでない人間にこの本を読む価値があると薦める気にはなれない。
まあエッセイなんてそんなものかもしれないけれども。
評価:★★★(満点は★★★★★)
そのほかの村上春樹作品感想
『若い読者のための短編小説案内』
『村上春樹、河合隼雄に会いにいく』 (河合隼雄との共著)
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